図書室の海
ある地方に伝わる奇妙なゲーム。
秘密裏にゲームを引き継ぐ「サヨコ」のほかに、鍵を渡すだけのサヨコがいた。
もうひとつの小夜子の物語「図書室の海」他、不思議な話、ぞっとする話、異色SF等、全10篇収録。
夜のピクニック
あの一夜に起きた出来事は、紛れもない奇蹟だった、とあたしは思う。
夜を徹して八十キロを歩き通す、高校生活最後の一大イベント「歩行祭」。
三年間わだかまっていた想いを清算すべく、あたしは一つの賭けを胸に秘め、当日を迎えた。去来する思い出、予期せぬ闖入者、積み重なる疲労。
気ばかり焦り、何もできないままゴールは迫る。
ノスタルジーの魔術師が贈る、永遠普遍の青春小説。
『小説新潮』隔月連載を単行本化。
2005年 第2回本屋大賞受賞作品!!
ネバーランド
舞台は、伝統ある男子校の寮「松籟館」。
冬休みを迎え多くが帰省していく中、事情を抱えた4人の少年が居残りを決めた。
ひとけのない古い寮で、4人だけの自由で孤独な休暇がはじまる。
そしてイブの晩の「告白」ゲームをきっかけに起きる事件。
しかし、それには「一つだけ嘘を混ぜること」というルールがあった。
日を追うごとに深まる「謎」。
やがて、それぞれが隠していた「秘密」が明らかになってゆく。
驚きと感動に満ちた7日間を描く青春グラフィティ。
麦の海に沈む果実
「ここに三月以外に入ってくる者があれば、そいつがこの学校を破滅に導くだろう」
湿原の真中に建つ全寮制の学園に、二月の終わりの日に転入してきた水野理瀬。
彼女を迎えたのは、様々なしきたりや、奇妙な風習が存在する不思議な学校だった。
彼女と学校生活を共にする仲間、「ファミリー」もそれぞれに謎を抱えていた。
功は、閉ざされたコンサート会場の中から失踪し、麗子は、湿原に囲まれて外に逃げ出せないはずの学園から消えうせていた。
残りのメンバーは、麗子はすでに死んでいるのではないか、と校長につめよる。
それに対し、校長が提案したのは、麗子の霊を呼び出す交霊会の実施だった。
その場で理瀬に奇怪な現象が襲う。
「三月の学園」での奇妙な学園生活を送る理瀬の隠された秘密とは。
球形の季節
四つの高校が居並ぶ、東北のある町で奇妙な噂が広がった。
「地歴研」のメンバーは、その出所を追跡調査する。
やがて噂どおり、一人の女生徒が姿を消した。
街中では金平糖のおまじないが流行り、生徒たちは新たな噂に身を震わせていた・・・。
何かが起きていた。
退屈な日常、管理された学校、眠った町。
全てを裁こうとする超越的な力が、いま最後の噂を発信した!
「5月17日」その日付にエンドウさんという子が宇宙人にさらわれる、という噂は現実となった。
「宗教なんて未完成だし、矛盾だらけなのは承知してるわ。
でも、ろくな答えのないこの世の中では、比較的きれいな答えの一つだと思うわ。」
「一晩にして何ステップもの進化の過程を一気に飛び越える
ここは、そういう場所なんだ。
ここに来られるものは”跳べる”のさ。なぜかは知らない。
が、その素質を持っているものがここに来れば”跳べる”。それは事実なんだ。
ただ、俺が知っているのはみんな、不幸な体験のせいで無理に川を越えさせられた奴ばかりだ。
俺はそれが嫌なんだ。他にもっと自力で跳べる奴がいるはずなんだから。
仁、おまえのようにね。」
東北にある地方都市の特異性を民俗学的要素を踏まえて小説化している。
ウワサ、マジナイ、流行を通じて異世界へ。そして伝説へ。
幻想的なものとして現れる場所。
そこへは選ればれたものが入ることができ、選ばれたものだけが”跳べる”。
その部分だけは見れば、映画「マトリックス」に通じる部分がある。
幻想的な場所と”跳べる”からはドラッグのようなものを思い浮かべるかもしれないが、
そこは恩田陸。現実をファンタジーへ移行させる技術はピカイチ。
現実と地続きの異世界へようこそ。
六番目の小夜子
津村沙世子―とある地方の高校にやってきた、美しく謎めいた転校生。
高校には十数年間にわたり、奇妙なゲームが受け継がれていた。
三年に一度、サヨコと呼ばれる生徒が、見えざる手によって選ばれるのだ。
そして今年は、「六番目のサヨコ」が誕生する年だった。
学園生活、友情、恋愛。やがては失われる青春の輝きを美しい水晶に封じ込め、漆黒の恐怖で包みこんだ、伝説のデビュー作。
それがいつ始まり、誰が始めたのかは、正確にはわからない。
しかし、それは、三年に一度、必ず行われるのだ。
それは、他愛のないしきたりだった。なんの意味もない。
それをしたからといって、どこかで表彰されるとか、栄誉を与えられるとかいうわけではない。しかし、それでもその「行事」は行われた。
「サヨコ」になる者は、「サヨコ」自身と、その「サヨコ」を指名する、前回の「サヨコ」しか知らない。
次の「サヨコ」は、前回の「サヨコ」がいる代の卒業式当日に引き継がれる。
在校生が卒業式に花束を渡す時に、あるメッセージが次の「サヨコ」となるべき者に手渡されるという。
それを受け取った「サヨコ」は、「サヨコ」になることを承知したという証拠に、四月の始業式の朝、自分の教室に赤い花を活けなければならない。赤い花が活けられた瞬間から、その年のゲームはスタートするのだ。
「サヨコ」のすべきことはたった一つ。
年にただ一つだけである。
それさえ誰にも自分が「サヨコ」であることを悟られることなくやりとげれば、それがその年の「吉きしるし」であり、その年の「サヨコ」は勝ったのだ。
私たちの卒業する年、その年は「六番目のサヨコの年」と呼ばれていた。
そして、それは、あの、不思議な暗喩に満ちた、恐るべき一連の出来事を引き起こしたのである。
「六番目のサヨコの年」。
その四月の始業式の朝、この物語は始まる。









